日本認知・行動療法学会では、認知行動療法の臨床・研究の発展・充実に寄与する研究発表の奨励を目的として、日本認知・行動療法学会の年次大会に応募されたポスター発表のうち、最も優れた発表に対して授賞する「ポスター発表賞」の選考を行い、最優秀研究報告賞、優秀研究報告賞、優秀症例報告賞を授与しました。
このたびは、日本認知・行動療法学会第51回大会において優秀研究報告賞を賜り、誠にありがとうございます。ご選考いただきました選考委員の先生方に、心より御礼申し上げます。
本研究では、カウンセリングで広く用いられているソクラテス式質問が、人の考えの確信度や理解の仕方に与える影響について、情報提示(心理教育)群および統制群と比較して検討しました。その結果、時間経過に伴う考えへの確信度の低下は、ソクラテス式質問群と情報提示群でのみ認められ、統制群では確認されませんでした。
また、自分の考えと矛盾する反証情報に対するTotal Conviction(腑に落ちる感覚を伴った理解)は、ソクラテス式質問群および情報提示群で高く、反証情報への理解が深まる可能性が示されました。さらに、質問の効果には個人差があり、「先読み」や「深読み」といった認知の偏りの傾向によって理解の深まり方が異なる可能性が示唆されました。
これらの結果は、質問の効果が個人の認知特性に依存し得ることを示しており、臨床実践においてクライエントに応じて質問の用い方を工夫する重要性を示唆するものと考えられます。
本研究は、広島大学の橋本淳也先生、福岡県立大学の小林亮太先生との共同研究として実施しました。また、実験にご協力くださった参加者の皆様に深く感謝申し上げます。このたびの受賞を励みに、今後も研究を発展させ、臨床的に意義のある知見の還元に努めてまいります。
このたびは、日本認知・行動療法学会第51回大会において優秀研究発表賞を賜り、誠にありがとうございます。ご選考いただきました委員の先生方に心より感謝申し上げます。
本研究で対象としたASD就労準備プログラムは、臨床現場でのニーズにもとづいて、岡山県精神科医療センター院長の来住由樹先生と土岐淑子先生が中心となり立ち上げたものです。このプログラムは、「体験-気づき-機関併走」をコンセプトに、模擬就労場面での作業体験を通じて自身の得意・不得意への気づきを得てもらい、必要な福祉・労働機関への橋渡しが行えるよう設計されています。
岡山県精神科医療センター心理臨床班とデイケア班のメンバーで地道に実践を積み重ねてきた中で、「同じプログラムを受けて就労し、仕事を続けられる人とそうでない人がいるが、この違いは一体どこから生まれるのか?(そしてそのような方々にはどのような支援が必要なのか)」という疑問が生まれてきました。本研究は、この臨床疑問に答えるべく、プログラム終了者を対象とした後ろ向きコホート研究として実施しました。
日々の実践の中から生まれた問いを研究として形にし、このように評価していただけたことを大変嬉しく思います。共同研究者の皆様、ご協力くださったスタッフの皆様、そして利用者の皆様に深く御礼申し上げます。このたびの受賞を励みに、臨床実践と研究の往還を大切にしながら、今後も精進してまいります。
(以下、代表者 中村より寄稿させていただきます。)
この度は、優秀症例報告賞を賜り、誠にありがとうございます。関係者の皆様に心から感謝申し上げます。
本症例は、母への主張行動が弱化し「生きているだけで迷惑」と思い込むCLに対し、「承認的関わり」として、自傷等の不適応行動に関する一連の思考・行動・感情の過程を言語化し、それらを理解できるものとして受け止めることを継続しました。その一方で「問題解決的関わり」として主張する意味があることを伝え続けました。最終的に、母がCLへ歩み寄ったことでCLの信念変容と主張行動が生起し、状態改善が得られましたが、このような機会が得られるまで2つの関わりのバランスを取って継続することで、CLが内面を語り、問題に向けて共同作業を可能にしたと考えられます。
DBTは治療の構造上、導入に難しさがあります。しかし、弁証法のエッセンスを部分的に導入するだけでも介入に役立てられると考えられ、本症例がその1つの知見となれば幸いです。
今回の受賞は、治療に携わった皆様、ご指導をいただいた先生方、サポートをいただいた皆様、そして患者様やご家族のお力添えによるものと思います。今後もより一層研鑽を重ね、精進して参りたいと思います。